2022年5月27日 (金)
来日中のタイのプラユット首相兼国防相は26日、東京都内で時事通信などの取材に応じ、ロシアによる侵攻が続くウクライナ問題などの国際情勢を念頭に「経済の回復には柔軟な対応が必要」との考えを示した。ロシア非難を繰り返す日米欧と一線を画し、ウクライナ問題で中立を維持するタイの立場を説明した。
タイは今年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)議長国を務める。先週末にバンコクで開かれたAPEC貿易相会合は、参加21カ国・地域中、日米など5カ国がロシア閣僚の発言中に退席。ロシアは反発し、全会一致が原則の共同声明を採択できなかった。
プラユット氏は「包括的な社会を構築すべきだ」と強調。
新型コロナウイルスが広がった過去2年の教訓から「経済を成長させるには柔軟でなければならない」と述べ、「平和と安定には経済回復が必要だ」と語った。
プラユット氏は今月初め、タイを訪れた岸田文雄首相に対し、両国関係を「戦略パートナーシップ」から「包括的戦略パートナーシップ」に格上げするよう提案した。取材では「タイへの技術移転には技術先進国である日本の協力が必要」と指摘。今回の来日が両国関係の強化につながることに期待を表明した。
日本からの防衛装備品の輸出を可能とする「防衛装備品・技術移転協定」に署名したことに関しては「戦争を始めたいわけではない。軍用車両や迫撃砲の製造・修理のためだ」と説明した。
岸田文雄首相は26日、首相官邸でタイのプラユット首相、シンガポールのリー・シェンロン首相と相次いで会談し、ロシアによるウクライナ侵攻に連携して対応する方針を確認した。
日タイ首脳会談で岸田首相は「国際社会が一致してロシアに反対の声を上げる必要がある」と結束を呼び掛け、食料支援などの重要性を指摘。プラユット首相は「基本的な考えは一致している」と応じた。
日シンガポール首脳会談では、岸田首相が「東・南シナ海での力を背景とした一方的な現状変更の試みに反対する」と強調。双方は法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化が重要だとの立場を共有した。米国主導の経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の発足も歓迎した。
日本の水際措置緩和に関し、リー首相は「日本との人的往来を強化したい」と表明。プラユット首相も評価すると伝えた。
26日付のタイ英字紙バンコク・ポスト(経済1面)によると、ロシアとウクライナの戦争により多くの国が食料安全保障に対する懸念を高め、国内供給を確保するために輸出禁止に踏み切る例が出ていることについて、タイの政府や食品企業の幹部は、同国で食料不足の懸念はないと強調した。
ジュリン商務相は、国際食品見本市「THAIFEX-Anuga Asia2022」の開会式で、タイには潤沢な食料があると説明。現在はタイが高品質な農産品や食品の世界的拠点だと示す好機であり、食品関係の輸出拡大に寄与するとの見方を示した。
食品の価格高騰を受け、アジアの多数の国が消費者を守るために農産品の輸出制限を開始。
マレーシアが鶏肉輸出を禁止したほか、インドは6年ぶりに砂糖輸出量を制限。同国政府は輸出業者に対し、6月1日〜10月31日に海外向けに出荷する全量について、政府の許可を申請するよう求めた。
ジュリン氏は、商務省が主要食品の国内在庫を注視していると指摘。その上で、国内需要を上回る品目の輸出を促進する計画を明らかにした。
タイの食品・農業大手チャロン・ポカパン・フーズ(CPF)のプラシット最高経営責任者(CEO)は、多くの食品が供給過剰となっており、タイで食品の輸出禁止措置が導入される公算は小さいとの見通しを示した。(時事)
26日付のタイ英字紙バンコク・ポスト(経済1面)によると、暗号資産(仮想通貨)の譲渡を付加価値税(VAT)の課税対象外とする勅令が25日、官報に公示された。2023年末までの時限的な措置で、財務省から事業の営業許可を取得しているデジタル資産取引所で売買される暗号資産が対象となる。
この措置について、デジタル資産管理会社クリプトマインド・グループ・ホールディングスのアカラデットCEOは、タイ中央銀行が将来発行するデジタル通貨の利用を後押しする狙いがあると指摘。ただ、投資家はVAT免除よりもキャピタルゲインの非課税を望んでいると付け加えた。
一方、韓国産の仮想通貨「テラUSD(UST)」と「ルナ」の暴落が他の仮想通貨に波及しており、アカラデットCEOは投資家の信頼を取り戻すには時間がかかるが、世界経済が回復すれば持ち直すとの見方を示した。(時事)