2022年5月27日 (金)
【シンガポール時事】シンガポール入国管理局(ICA)は26日、北部ウッドランズ国境検問所(WCP)を拡張して再開発する計画を発表した。2050年までに隣国マレーシアとの陸路での車や人の交通量が40%増になると予想されるため、処理能力を増強する。
◇公団住宅9棟で立ち退き
ICAと土地管理庁(SLA)は17年、WCP拡大のため、隣接する旧ウッドランズタウンセンター(OWTC)の再開発を発表していた。完成時には高速道路ブキティマ・エクスプレスウエー(BKE)に直接連絡できるようになり、利便性が増す。
ICAによると、50年までにWCPの交通量は40%近く増加すると見込まれている。
新型コロナウイルス感染拡大前の19年は1日当たりの旅行者が約30万人だったが、40万人規模に増えると予想される。WCPは今年4月1日の陸路国境再開で交通量が週末にはコロナ前水準の90%近くにまで増えており、完全回復も時間の問題とみられている。
もし国境検問所の処理能力を増強しないままだと、50年までに車での移動時間がピーク時では60〜70%長くなる恐れがあるという。ICAは対策として、WCP拡張計画を当初のOWTC跡地だけでなく、隣接する公団住宅9棟の敷地も転用し、拡張規模を拡大することを決めた。
住宅開発庁(HDB)は、立ち退き対象となる公団住宅9棟の分譲住宅732戸と賃貸住宅53戸や貸店舗などに「限定的一括再開発スキーム(SERS)」事業を導入。
近所に新たに建設する公団住宅の優先購入権や助成金などを提供する。
◇10〜15年かけて再開発
ストレーツ・タイムズ紙によると、記者会見でICAのシュー・シンユン副長官は、再開発は数期に分かれ、10〜15年かかるとの見通しを示した。第1期ではトラックやオートバイの入国審査用レーンを拡張予定だという。
【シンガポール時事】日系飲食店のフランチャイズ展開を手掛けるジャパン・フーズ・ホールディングが25日発表した2022年度下半期(21年10月〜22年3月)決算で、純利益が前年同期比46.4%増の490万シンガポールドル(以下ドル、約4億5000万円)となった。売り上げは2.9%増の3340万ドル(約30億9000万円)。ジャパン・フーズが手掛けるハラル認証の日本食レストラン「東京食堂」の店舗拡大で売り上げが伸び、その他の飲食店での落ち込みを相殺した。新型コロナウイルスの規制緩和も追い風になった。
東京食堂はイスラム教の戒律に沿って使用できる「ハラル認証」を取得した。イスラム教徒は戒律による規定で豚肉を食べることが禁じられているが、東京食堂では豚骨ラーメンに似せた鶏ラーメンを提供している。
シティー・スクエア・モール、テンパニス・モール、ウエストゲートなどのショッピングモールに店を構えている。
ジャパン・フーズの高橋研一・最高経営責任者(CEO)は声明で、グループの業績と東京食堂の盛況ぶりは非常に勇気づけられるとコメント。さらに成長させるため、より多くのリソースを投入すると話した。
22年度下半期の粗利益は前年同期比3.2%の2840万ドル(約26億円)。人件費の高騰により販売・流通費は2%増、管理費は22.7%増となった。
ジャパン・フーズはシンガポールで日系ラーメン店「味千ラーメン」「麺屋武蔵」「金色不如帰」「大阪王将」なども運営している。
政府は26日、新型コロナウイルス対策で停止していた海外からの観光客受け入れについて、団体ツアーに限り6月10日から解禁することを決めた。現在5空港にとどまっている国際線の運航については、新千歳空港と那覇空港でも6月中に再開させる。
岸田文雄首相が東京都内での講演で明らかにした。海外観光客はコロナ感染拡大を受けて2020年4月から停止しており、2年2カ月ぶりの再開。内外の感染状況が相対的に落ち着いていることや、インバウンド需要など経済効果への期待が強いことを踏まえた。
国土交通省などによると、受け入れを始めるのは添乗員付きのパッケージツアー。受け入れ地域は、ウイルス流入リスクに応じて「青」「黄」「赤」に3分類した各国・地域のうち最もリスクの低い「青」グループで、入国者ベースで8割程度の国・地域が含まれる見通しだ。
首相は「今後も感染状況を見ながら、段階的に、平時同様の受け入れを目指していく」と説明した。
政府は6月1日から1日当たりの入国者上限を約1万人から約2万人に引き上げる方針を決めており、観光客もこの枠内で受け入れる。入国者のマスク着用などについては、新たに策定するガイドラインの順守を求める。団体客に限定するのは、行動や感染状況を管理しやすくするためで、今月下旬から少人数の団体パッケージツアーを受け入れる実証事業を始めていた。
政府はまた、海外へ渡航する際の「感染症危険情報」のレベルを全体的に引き下げた。レベル2(不要不急の渡航自粛)としていた145カ国・地域のうち、米国や英国を含む36国・地域をレベル1(渡航注意)に引き下げるなどした。
政府はこれまで検疫体制などを理由に、国際線の運航を、羽田、成田、関西、中部、福岡の5空港に限っていた。これに新千歳と那覇を加えた主要7空港全てで運航が再開される。
岸田文雄首相が26日、訪日観光客の受け入れを来月から再開すると表明した。訪日観光は新型コロナウイルス感染拡大が本格化した2020年春以降、約2年間にわたって停止しており、恩恵が見込まれる航空や旅行、小売りなど関連業界で期待が高まる。ただ、1日当たり2万人の入国者上限は厳しいとの指摘が多く、訪日観光が経済成長のけん引役として復活するまでの道のりは長い。
ANAホールディングスの芝田浩二社長は、コロナ前は平均して1日当たり14万人程度が入国していたと説明。その上で「(入国者)上限が上がると予約は増える。需要はしっかりとある」と期待する。羽田空港の利用増を追い風にしたい京浜急行電鉄は「(利用者が)増加することはとても喜ばしい」と歓迎する。
プリンスホテル(東京)も「海外のお客さまが戻り、観光産業が活性化する」と見込む。近畿日本ツーリストなどを傘下に持つKNT―CTホールディングスは今回の動きを前向きに受け止めつつ、「入国上限枠が大きくなったり、外れたりしないとまだ厳しい」(米田昭正社長)と水際対策のさらなる緩和を求める。
日本百貨店協会の安田洋子専務理事は、円安で訪日客の購買力が増しており、「政府の考え方は期待できる」と評価。百貨店関係者は「接客や免税手続きなど忘れていることが多く、復習しようかと話し合っている」と明かす。
一方、中国ではコロナ対策のため国民の出国が厳しく制限されている。大手家電量販店の広報担当者は、コロナ前に「爆買い」で売り上げに貢献していた中国人観光客について「戻ってくるにはまだ時間がかかる」との見方を示した。