シンガポール版

2021年10月19日 (火)

電力小売り、撤退相次ぐ=卸売価格高騰で採算悪化

 【シンガポール時事】シンガポールの電力小売オーム・エナジーは16日、電力小売事業からの撤退を発表した。10月に入って計3社が撤退を表明した。国内では2018年に電力自由化が実施され、小売事業者が参入したが、最近の電気卸売価格急騰で採算が悪化し、事業継続が難しくなっている。新規顧客受け入れを停止している企業も数社あり、撤退する企業がさらに出てくる可能性がある。18日付のビジネス・タイムズ紙(2面)などが伝えた。

 電力小売業界4位のアイスイッチは13日に撤退を表明。既存顧客はすべて電力・ガス大手SPグループが引き継ぐ。商業、工業ビル、集合住宅に電力を販売するシルバークラウド・エナジーも撤退を発表した。

 ◇自由化で12社参入

 国内の家庭用電力は長らくSPグループが独占的に供給してきたが、エネルギー市場監督庁(EMA)が18年11月から19年5月にかけて段階的に電力市場を自由化した。電力小売業者には小売りだけを行う独立系事業者と、発電と小売りの両方を行う業者の2種類がある。

 市場に参入した企業は、オーム・エナジー(SPグループと提携)、サンシープ・エナジー(太陽光発電)、トゥアス・パワー・サプライ(中国国有電力華能集団子会社)、ジェネコ(電力・エネルギー会社YTLパワーセラヤ子会社)、ケッペル・エレクトリック(シンガポール政府系複合企業ケッペル傘下)、パシフィックライト・エナジー(マレーシア国営ペトロナス・パワーと地場FPMパワーの合弁。 FPMパワーは香港投資会社ファースト・パシフィックとフィリピン・マニラ電力子会社との合弁)、セムコープ・パワー(シンガポール政府系複合企業セムコープ傘下)、セノコ・エナジー(丸紅、関西電力、九州電力、国際協力銀行、仏エンジ−のコンソーシアム)、ベスト・エレクトロシティー・サプライ(自動車関係プライム・グループ傘下)、アイスイッチ(先物取引RCMAグループ傘下)、ダイヤモンド・エネジー・マーチャンツ(エネルギー関連ダイヤモンド・エナジー傘下)、ユニオン・パワー(LPG小売ユニオン・エナジー傘下)の12社。

 ロイター通信によると、撤退を表明した3社のほか、ダイヤモンドとベストの2社が新規顧客受け入れを停止した。 ダイヤモンドは既存顧客をSPパワーに移行手続きだという。

 ◇電力卸売価格、需要増で高騰

 電力卸売価格の急騰が電力小売企業の業績を圧迫している。電力小売企業の顧客は主に6〜24カ月の定額料金プランを契約している。契約期間中に卸売価格が上昇しても契約期間中の顧客にはコストを転嫁できない仕組みになっている。

 ビジネス・タイムズ紙によれば、シンガポールの電力卸売価格は過去3カ月に繰り返し過去最高値を更新している。

 国内の市場状況に応じて30分ごとに変動する電力卸売価格(統一電力価格=USEP)は、7月に1メガワット時(MWh)当たり1514.86シンガポールドル(以下ドル、約12万8000円)を記録。 7月の平均USEPを過去6年で最高の167.04ドル/MWhにまで押し上げた。10月12日には3008ドル/MWhに到達。月平均USEPは03年に全国電力市場開始以来最高値の1597ドル/MWhになった。

 EMAによると、電力料金上昇は、電力需要の拡大と発電所数カ所での供給量減少などが背景にある。インドネシア西ナトゥナと南スマトラからのガス供給の減少も影響しているという。

 シンガポールのエネルギー源は全面的に天然ガスに依存。隣国インドネシアとマレーシアからパイプラインでガスを輸入している。通常は長期供給契約で調達しており、天然ガス価格は石油価格に連動している。

 しかし長期契約で賄いきれないため、最近は変動の激しいスポット価格で取引される液化天然ガス(LNG)の輸入量が増加している。 LNGスポット価格は、新型コロナウイルス感染拡大からの経済回復にともない、欧州、南米、アジアで需要が急増し、価格が急上昇している。

 ロイター通信は15日、シンガポールのLNGターミナルを運営するシンガポールLNG(SLNG)がスポットでのLNG調達を検討していると伝えた。

消費税引き上げ、インフレ見通し考慮して判断=24年に炭素増税―ウォン財務相

 【シンガポール時事】シンガポールのローレンス・ウォン財務相は15日、物品・サービス税(GST、日本の消費税に相当)の増税時期について、決定に当たっては「インフレの見通しを含めた経済全体の見通しを考慮する」と話した。16日付の地元紙ストレーツ・タイムズ(A1・6面)が伝えた。炭素税に関しては、2024年に引き上げる考えを示した。

 ウォン財務相はシンガポール国立大(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院政策研究所(IPS)が主催した経済関連の会議で発言した。政府は18年度予算でGSTを現行の7%から9%に引き上げる計画を表明。22〜25年のいずれかの時期に実施する方針を示している。

 同相は増税に際して、大多数の国民には5年間、低所得層には10年間、影響緩和策が講じられると強調。さらに中低所得者向けに現金を支給する「GSTバウチャー」制度も恒久実施すると話した。

 19年に導入した炭素税については、22年度予算で税率改定を発表して24年から施行すると説明。現在の税率は低過ぎると述べ、政府は炭素税の水準と軌道を見直していると話した。

 現行の炭素税では温室効果ガス1トン当たり5シンガポールドル(約420円)が課されている。

 また資産に課税する「富裕税」の導入をめぐっては、「制度を拡大する上でどのような選択肢があるかを検討している」と説明。 具体的には政府は3要素▽簡単に回避できない効果的な課税方法か▽全体的な競争力を損なうことなく実施できるか▽新たな富裕税がシンガポールの全体的な歳入や回復力を高められるか―を考慮するという。

 その上で、「どのような形の富裕税であっても、富は移動するものであり、簡単に(課税を)避けられるという点が大きな課題や現実的な問題としてある」と指摘。「人材や富はよそに移動できてしまうので、その点を慎重に考慮しなければならない」と述べた。

サマセットに観光施設開発へ=「未知の体験型アトラクション」募集

 【シンガポール時事】シンガポール土地管理庁(SLA)、都市再開発庁(URA)、政府観光局(STB)は、繁華街サマセットの更地を観光施設として開発するため、開発に当たる企業を選ぶ入札の手続きを始めた。18日付のストレーツ・タイムズ紙(A1面)が報じた。

 公告によると、入札者は2019年に発表されたオーチャードロード一帯の再活性化計画に基づき、「アジア、東南アジア初となる、未知の体験型アトラクションを提供する」提案が求められる。

 開発予定地は、サマセットの商業施設オーチャードゲートウエーと、通信最大手シンガポール・テレコム(シングテル)が入居するコムセンターの間の空き地。 敷地面積は約4600平方メートル。

 南部セントーサ島の「スカイライン・リュージュ―・セントーサ」中心部デンプシーの「ミュージアム・オブ・アイスクリーム」などの体験型アトラクション、またはライフスタイルや公園型観光施設の開発などが例として挙げられている。

 施設に付随した小売店や飲食店も営業を認められている。だが、オフィス、ナイトクラブ、宿泊施設、宗教施設、フィットネスクラブやスポーツジムとしての土地利用は認められていない。

 さらに、土地利用は敷地の60%以内で総延床面積(GFA)は最高2000平方フィート。建物の高さは6階建てに相当する20メートルまで。

 SLAとURA、STBは合同でストレーツ・タイムズ紙に対して、開業日は特に指定していないが、入札者は土地賃貸開始日から2年以内にすべての工事を終了させるなど、開発に関するスケジュールを提出する必要があると述べた。 土地使用期間は3年と延長3年の計6年。建設に際して複雑なくい打ちや構造工事を必要としない案を呼び込めるとしている。2022年2月に発注先を決定予定。

 だが、不動産ERAリアルティー調査・コンサル部門責任者のニコラス・マク氏はストレーツ・タイムズ紙に、「土地開発企業にとって、住宅建設並の十分な利益を得るには6年の土地賃貸期間は短い」と指摘。また、今までにない新しい概念の観光施設のアイデアも多くないとし、望むような入札結果が得られない可能性があるとの懸念を示した。

 一方で、サマセット近辺では不動産開発UOLグループが2月、313サマセット向かいのフェーバーハウスの再開発計画を発表。 22年上半期から18階建250室のホテルを建設予定。20年6月には豪レンドリース・グローバル・コマーシャルREIT(不動産投資信託)がサマセットロードとグランジロード交差点の露天駐車場の再開発権を得たと発表した。22年第2四半期(4〜6月)開業予定で、食文化や歴史を体験できるアトラクションの他、独立系映画館ザ・プロジェクターも入居予定だ。

《トップニュース》

《産業》

  • シンガポール新興企業がデータセンター建設=インドネシア・バタム島に
  • GIC、チェコの通信インフラ企業株を取得=PPFから

《経済》

  • 9月の輸出12.3%増=市場予想上回る
  • 飲食・小売店、値上げ不可避か=輸送などコスト増
  • 〔アジア外為〕バーツ主導で下落(18日)
  • 〔東南アジア株式〕おおむね上昇=クアラルンプールは一時5カ月ぶり高値(18日)

《政治》

  • コロナ対策、「ゼロ」でも「共存」でもない=中道的アプローチで死者抑制―オン保健相
  • 老人ホーム、新たに7カ所開設=急速な高齢化に対応

《社会》

  • 地元ニュースサイトの免許剥奪=編集長「メディアへの嫌がらせ」
  • 11〜1月の車所有権発給数、さらに減少=今期比24%減

《各地のシンガポール関連ニュース》

  • 中国とインドの投資誘致に注力を=コロナ禍で隣国に遅れとる―タイTCC
  • 外高橋造船、コンテナ船10隻受注=カナダ社から―上海市

《コラム・リポート》

  • 【早読み!週刊誌】ノーベル賞受賞者、日本嫌いの理由(10月11〜17日)

《マレーシア》

  • マレーシア、仏と潜在26億リンギの投資交渉まとめる=貿易産業省が代表団派遣
  • ペトロナス、上流部門の設備投資に年200億リンギ=27年までの5年間で
  • クラウドサービス、来年1月から免許制に=マレーシア政府
  • 中韓越の冷延コイルへの反ダンピング税継続=貿易産業省

《インドネシア》

  • コロナ前より大幅減益か=国営企業、再編推進でも
  • ハラル認証取得を義務化=医薬品と化粧品、消費財で―宗教省
  • 政権満足度66%に低下=「政治・治安」「法執行」で悪化顕著―地元紙調査

《タイ》

  • ジェトロ、日本産食品の第2回オンライン商談会開催=過去最多の171社参加
  • シチズン時計、タイの工作機械工場で生産強化
  • カシコン銀、DeFi技術開発の新子会社「カシコンX」を設立

《ベトナム》

  • カータム油田、原油生産量100万トン突破=操業開始3年で―ベトナム・ロシア合弁会社
  • ビナケム、4子会社からの出資引き揚げを継続=ドクザンケミカルなど
  • 通年の貸出目標、98%達成=9月末実績、前年を1割超上回る―ベトナム外商銀

《ミャンマー・カンボジア・ラオス》

  • 合意不履行、民主派が原因=首脳会議排除に反発―ミャンマー軍トップ
  • 「ペーパーゴールド」制度実施へ=ミャンマー金業協会

《中国・香港・台湾》

  • 中国経済、さらに減速へ=電力不足や恒大危機―習指導部が引き締め
  • ソニーに罰金=盧溝橋事件の日に新商品―中国・北京市
  • 恒大汽車などEV新興、ファンド出資を模索=上場条件厳格化で―広東省・中国
  • 極超音速兵器でなく「宇宙船」=往復技術の実験と主張―中国
  • TPP加入、日本の支援に期待=「中国が妨害」と批判―台湾交渉トップ

《Japan/World Today》

  • 経済安保に配慮できず=LINEの情報管理で最終報告
  • 政府、原油高対策で閣僚会合=生活への影響懸念、増産要請

《人事・訃報》

  • コリン・パウエル氏死去=黒人初の米国務長官―コロナ合併症
  • 森山真弓氏死去、93歳=女性初の官房長官
  • 山本長氏死去=元空港施設社長、元海上保安庁長官

《マーケット情報》

  • 三菱UFJ銀行 アジア通貨日報 2021年10月18日
  • 米国市場サマリー(18日)
  • 〔中国・香港株式〕中国反落、成長鈍化を嫌気=香港続伸(18日)
  • 〔台湾株式〕反落(18日)
  • アジア主要市場の株価指数(18日、カッコ内は前営業日比)
  • 東証出来高・指数(18日、平均株価単位=円)
  • 〔ロンドン海運市況〕バルチック・ドライは−122の4732で終了(18日)
  • 上海メタル(18日)

《新聞各紙から》

  • 東京各紙朝刊(19日)