2022年5月27日 (金)
【ハノイ時事】ベトナム計画投資省が26日に公表した年初から5月20日までに認可された外国企業による直接投資(FDI、出資など含む)の金額は、前年同期比16.3%減の117億1000万ドル(約1兆4900億円)だった。投資変更(増資)額、出資・株式取得額はともに大きく伸びたが、2021年に見られたような大型案件が乏しく、新規投資額が半分以下の水準に落ち込んでいる。日本からの投資額は63.5%減の9億4400万ドルとなり、国・地域別で5位となった。
新規投資は、金額が53.4%減の41億1600万ドル、プロジェクト件数は5.7%減の578件にとどまった。21年には南部での発電所プロジェクトなど大型案件があったが、22年にはあまり見られず、前年水準を大きく下回っている。
増資は、プロジェクト件数が15.5%伸び、金額は45.4%増の56億1100万ドルだった。出資・株式取得は、金額が51.6%増の19億8200万ドル、件数は5.8%減の1339件。
業種別では、製造業向けが68億1400万ドルと最多で、全体の58.2%を占めた。
◇国別トップはシンガポール
国・地域別のトップは、引き続きシンガポールで、ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)による北部バクニン省での追加投資などがあった。ただ、投資額は29億5700万ドルで、前年水準を43.8%下回った。
2位はサムスン電機ベトナムによるタイグエン工場の追加投資があった韓国。
12.6%増の20億6000万ドルの投資があった。3位は、ビンズオン省への新工場建設を決めたレゴ・グループが本拠を置くデンマークで、投資額は13億2000万ドルだった。4位は中国で、1.7%減の11億3300万ドル。米国からの投資額は3.7%減の1億7500万ドンで9位だった。
地方の省・市への投資動向は、レゴによる大型投資のあったビンズオン省が25億2000ドルで最多となり、VSIPが追加投資したバクニン省(16億4900万ドル)が2位に続いた。3位はホーチミン市(13億2300万ドル)で、ハノイへの投資額は6億9100万ドルとなった。
◇対ベトナムFDI認可額・件数
| 新規投資額 | 投資変更(増資)額 | 出資・株式取得額 | 合計 |
2022年 | 4116 | (578) | 5611 | (395) | 1982 | (1339) | 11,710 |
2021年 | 8827 | (613) | 3859 | (342) | 1307 | (1422) | 13,995 |
◇主な対ベトナムFDI認可国・地域
| 新規投資額 | 投資変更(増資)額 | 出資・株式取得額 | 合計 |
1.シンガポール | 798 | (73) | 1608 | (38) | 550 | (128) | 2957 |
2.韓国 | 151 | (112) | 1700 | (134) | 208 | (491) | 2060 |
3.デンマーク | 1319 | (3) | 0.41 | (1) | 0.077 | (2) | 1320 |
4.中国 | 505 | (75) | 577 | (45) | 50 | (108) | 1133 |
5.日本 | 428 | (67) | 450 | (52) | 65 | (76) | 944 |
6.香港 | 263 | (34) | 435 | (32) | 12 | (17) | 711 |
7.オランダ | 15 | (9) | 18 | (1) | 609 | (10) | 644 |
8.台湾 | 296 | (26) | 197 | (21) | 50 | (70) | 544 |
9.米国 | 129 | (34) | 20 | (9) | 25 | (72) | 175 |
10.タイ | 23 | (10) | 0.495 | (6) | 143 | (14) | 167 |
(注)いずれも1月1日〜5月20日。
単位は百万ドル。百万ドル未満切り捨て。▲は減額。カッコ内は件数。
(計画投資省のホームページを基に作成)
【ハノイ時事】ベトナムのブオン・ディン・フエ国会議長は25日の国会審議で、2021〜25年の社会経済発展計画で示した経済成長率の実現に向けた道筋が不透明になっているとの認識を示した。国会は21〜25年に年6.5〜7.0%のペースで成長する目標を設定。21年実績が2.58%の低成長にとどまったことから、22年は8.0〜8.5%成長が必要となる。25年までの計画実現に向けて、22年には一段とプレッシャーがかかるが、「(成長目標の達成は)非常に難しい状況にある」と述べた。26日付のベトナム・ニュース紙が報じた。
フエ議長は、財政に限りがあるほか、国内経済の資金吸収能力が非常に低い状況にあることから、予算を執行するのが難しい状況にあると指摘した。
21年の公共投資の執行率は70%を超えたが、政府開発援助(ODA)は32.85%にとどまったことを明らかにした。
新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた経済の立て直しを目指し、国会で合意した340兆ドン(約1兆8700億円)に上る景気対策は配分が進んでいないが、実施期間は22、23年に限定されている。フエ議長は各議員らに問題を特定するよう求めつつ、配分できるが、執行できないという状況を終わりにさせることを促した。
今年1〜5月には、経済の持ち直しや歳入、農産物生産、貿易活動などで望ましい兆候が見られた。グエン・スアン・フック国家主席は、こうした前向きな動きを歓迎しつつも、社会の安定に向けた長期的な取り組みが始まったのにすぎないと指摘した。
国民、企業は新型コロナの影響に引き続き対処しており、家計の蓄えなどが底を突きつつあると訴えた。
当面、ベトナム経済が直面する課題としては、(1)インフレの加速(2)世界的なエネルギー価格の上昇(3)生産コストの上昇(4)株式市場の下落―を列挙した。景気対策と公共投資の執行を一段と促し、国民生活と企業活動を後押ししなければならないと強調した。
ベトナム投資開発銀行(BIDV)とアジア開発銀行(ADB)は25日、共同でセミナーを開催し、ベトナム金融市場の2021年を振り返るとともに、22年の見通しを示すリポートを公表した。この中で、22年の経済成長率は5.5〜6%と回復するが、インフレ率も4%程度上昇すると予想している。ベトナム金融機関がADBと共同で金融市場に関するリポートを作成するのは初めてという。国営ベトナム通信(VNA)が伝えた。
リポートはADB、BIDVの専門家によって作成され、銀行、証券、保険の各分野をカバー。21年についてリポートは、多くの国がコロナ禍後に社会経済活動を再開したことで世界経済は急速に回復したが、同時にインフレも急伸したと指摘する。
こうした中でベトナム経済も21年第4四半期初めから経済活動再開を容認するなど、コロナ感染防止戦略を転換したことで急回復したとしている。
分野別にみると、銀行業界では29商業銀行の税引き前利益が32%近く増えたと評価。株式市場では指標となる「ベトナム株価指数(VN指数)」が35.7%上昇し、取引口座数も過去最多となる150万口座に達した。保険業界でも、全体の保険料などの収入が前年比約19%増の217兆ドンに達した。一方でリポートは、銀行部門の潜在不良債権増加、金融犯罪の増加、株式市場の下方修正、相場操縦といったリスクが生じていると指摘している。
BIDV主任エコノミストのカン・バン・ルック氏は22年のベトナム経済について、5.5〜6%成長へと回復度合いは改善するが、インフレ率も3.8〜4.2%へと高まると予想する。
回復の恩恵を受ける銀行業界では全体の利益は年平均で20〜25%増加し、保険業界も成長を持続する。ただ株式市場では、より安定的で健全な成長に向け株価の調整局面があるとみている。
リポートはまた、関係当局などへの提言も盛り込んでおり、不良債権処理、証券・債券市場の健全化、金融システムのリスク管理、デジタル経済構築などについての法的枠組みや政策を整備するよう促している。(時事)
【ハノイ時事】ホンダ・ベトナムは24日、2021年度(21年4月〜22年3月)の事業概要と22年度の計画を公表した。21年度の二輪車販売台数は200万台強だった。ベトナムの二輪車市場全体が前年度比5.2%減の250万台強にとどまる中、ホンダの落ち込み幅は2.7%だった。市場シェアは2ポイント上昇し、約80%となった。
◇一部スクーター、5、6月は生産半減
ホンダは22年度について、「自動車、二輪車を含めた多くの製造業の生産・調達活動に関連する世界的なサプライチェーン(供給網)混乱の影響を今後も受け続ける」と警戒した。今年4月以降、現地生産している一部のスクーターの生産ペースが落ちていることを明らかにした。
「一部のスクーター生産は、5、6月には当初計画の約半分の水準に減少する」とし、「今後数カ月にわたってこうした状況が続く」との見通しを示した。
21年度の二輪車事業では、欧州のデザインを取り入れた「SH350i」(21年8月)、全面改良した「LEAD125cc」(21年12月)などの新型モデルを投入した。22年度には、「顧客ニーズを満たすために引き続き多くの新型モデルなどを市場に投入する」としている。21年度の輸出台数は約20万7000台、輸出額(部品含む)は4億6200万ドル(約587億3000万円)強で、前年度比25.5%増加した。22年度の輸出台数は、9%増の22万5000台強になると見込んでいる。
◇新車販売は7%減
自動車事業では、21年度の新車販売台数が約7%減の2万4000台強にとどまった。ベトナム政府が21年12月、新車の登録手数料を半減する措置を実施し、年度末にかけて自動車市場が持ち直した。ただ、年度前半に新型コロナウイルスの流行に伴う厳格な行動制限などの影響で販売が大きく落ち込んでおり、前年度の水準には届かなかった。
22年度は、新型車両の投入やディーラー網の拡充、サービスの向上などに取り組み、自動車販売の拡大を目指すとしている。
【ハノイ時事】山田滝雄駐ベトナム日本大使は25日、国会対外委員会のブー・ハイ・ハー委員長と会談した。会談では、米国が主導し、日本とベトナムなどが参加する新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」について、双方が今後協議で連携する方針を確認した。
ハー委員長は、4月末から5月初めにかけての岸田文雄首相によるベトナム訪問が両国関係の深化に貢献したと高く評価した。IPEFをめぐっては、今後の話し合いを通じて、国民に実際にメリットをもたらすような協力の枠組みとなることを望むと語った。
山田大使は、IPEFがインド太平洋地域の各国間の協力を強化する枠組みになると指摘。参加各国が経済・貿易に加え、幅広い協力を話し合うことになるとの見通しを示した。日本として、今後の協議でベトナムとの緊密な連携を期待する意向を伝えた。